看板にいたわりあり
車で走っているとき、危ないけれど「おっ!」と感嘆させられる看板を見止めることがある。
シンボルマークがシカ(鹿)になっている。私は、こういうアソビ心が大好きである。
私が通っている歯医者さんも、多分そのようなおココロで医院の名を決められたのではないかと思う。シカが付くもう一つの哺乳動物の名前になっているからである。
そこの先生、我らとほぼ同年代。マスクからはみ出る髪と髭はごま塩で、目はいつも笑っているように見える。たしかに、大の冗談好きである。
私「先生。夕べ歯が痛くて眠れませんでした」
先生「はいはい、お気の毒。自業自得です」
あるとき、私は診察台に張り付けられていた。先生が私の口を大きく広げるためにゴム製のドーナツを口唇と歯の間に強引にセットして来た。私の口は幸か不幸か、大きく丸く開いたままになった。多分、かの三波伸介の口の周りに丸く墨を塗った顔そっくりになっているはずである。三波伸介は舞台上の三枚目の役でいわゆる「アホな顔」をしたのであるが、私には役はない。
逆襲したくなった私は、「歯医者さんというのは不幸ですね」と回りにくい口で話しかけた。
「どうして?」と先生がのたまう。
「どうしてって、もし素晴らしい美人が来ても、このワッカを口に嵌めたらアホな顔になってしまう。その落差は幻滅そのもの。それは、歯医者さんの不幸というものでしょう」
先生は「フフン」と鼻で笑って麻酔もせず治療に入った。
筆者のツイッキー: 鮫は何度でも歯が生えかわるそうである。将来、遺伝子治療により人間でもそれが可能になったら、世の歯医者さんはいったいどうなるのだろう。我が敬愛する先生のために今から心配である。

































最近のコメント